読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

A Perfect Night For Bananafish

だがそれを語るには人生は短すぎる

森見登美彦「夜行」

読んだ。

夜行

夜行

これまでのあほうな感じではなくシリアス。
カンタベリー物語」のような枠物語風形式。「夜行」と題された連作銅版画と神隠し。

画廊から始まり銅版画をめぐる話といえば山尾悠子ラピスラズリ」の影響を感じる。
山尾悠子「ラピスラズリ」 - A Perfect Night For Bananafish
違和感のある世界、オチのない不思議な感覚もどこか似ている。

ジブリアニメ「千と千尋の神隠し」で現実世界からトンネルを抜けてどんちゃん騒ぎの百鬼夜行のような異世界に迷い込み、そこからさらに列車に乗って現実世界に似たパラレルワールド特異点のようなところにたどり着く。
森見登美彦氏のこれまでの作風とは異なるこの作品は、まさにこの感じである。
あれ、今までの森見作品と違う...従来の読者はこの違和感を強く持つためより不安な気分になるのではないか。
作者がこれまでの作品世界に迷い込んだのかはたまた抜け出そうとしているのか魔境を暗中模索しているような印象。

「春風の花を散らすと見る夢はさめても胸の騒ぐなりけり」(西行山家集
直木賞は残念ながら受賞ならず。胸騒ぎはどうですか?別の世界ではバラ色のキャンパスライフを送っていますか?
2017-01-20 - この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ

尾道奥飛騨津軽天竜峡、鞍馬、どれも鉄道に乗って移動するシーンがある。レールの上に乗っているはずなのに、よくわからない世界へたどり着く不安さは人生そのもの。これからも従来作品の世界と、この作品、そしてその先の世界を行ったり来たりしながら新たな作品にたどり着いて欲しい。

メモ
  • 「先輩は解決できることにしか興味ないから」
  • 旅というのは密室のようなもの
  • たとえば子どもの頃、午後にうたた寝などをして、唐突に目が覚めたような感じでした。
  • 「世界はつねに夜なんだよ」