A Perfect Night For Bananafish

だがそれを語るには人生は短すぎる

山尾悠子「ラピスラズリ」

読んだ。

ラピスラズリ (ちくま文庫)

ラピスラズリ (ちくま文庫)

深夜営業の画廊に飾ってある三葉の銅版画から物語は始まる。
太宰治の「人間失格」も三葉の写真から始まるね。
太宰治 人間失格

――これは落ち葉枯れ葉のものがたり。

苦戦した。

幻想小説というものに慣れていないせいなのか。
忙しい時期だったので一気に読み終われなかったというのも原因かもしれない。
5部構成の中でも一番長い第3部「竈の秋」がつらくてつらくて。
これでも文庫版はストーリーがわかりやすくなっているらしい。ウーム手ごわい...。

何しろ視点がころころ変わり、ストーリーを追うことを拒んでくる。
このセリフは誰の発言なのかすらわからなくなってきて頭がクラクラしてくる。
第一部の主人公も男なのか女なのかも疑わしくなる。

お嬢ちゃんの格好をしているけれど、ほんとうは坊ちゃんでしょう。

物語にはゴーストも登場。クリスマス・キャロルでも現在過去未来のゴーストが出てきた。時系列も行ったり来たりで翻弄されるこの物語。そして幻想世界だと思っていたものが第5部では西暦1226年の聖フランチェスコ。現実世界につながっている恐怖。もう何が何だかわからない。
だけどもう一度落ち着いて読んでみると実はきちんとつながっている。パズルのピースを集めながら進む迷路だ。
言の葉の落ち葉枯れ葉のモザイクを拾い集めるとストーリーがつながってくる。

――これは秋の枯れ葉に始まる春の目覚めのものがたり。

キリスト教的な死と再生。人形を好む偶像崇拝。輪廻転生のように繰り返す物語。そして巡る季節。
突然襲い来る地震からの復興。
宗教、美術、文学。さまざまな文化がこの本には詰まっているような気がする。
でも音楽がない。静寂ではあるが重低音の唸るような音が延々と続いているような圧力を感じる文だ。
とにかくそれが苦痛。
冬眠者の話とのことなので冬のうちに読み終わりたかったが、もう春だ。
結局自分もこの冬のあいだじゅうこの物語の悪夢にうなされた冬眠者となってしまった。
でもまたやってくる冬にはもう一度この本を読み始めると思う。