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A Perfect Night For Bananafish

だがそれを語るには人生は短すぎる

野崎まど「know」

読んだ

know (ハヤカワ文庫JA)

know (ハヤカワ文庫JA)

know、脳、電脳、量子脳、すごく好みのジャンル。
おまけに最近ハマっている京都が舞台ときた。
シライシユウコ氏の表紙は本書の内容と相まってハーモニー (ハヤカワ文庫JA)を思い出す。

工学的に頭が良くなるということだけでなく、仏教、キリスト教といった神や宗教まで巻き込んで人間の死生観の話にまで展開する壮大なSFだ。
スティーヴ・フィーヴァーの「ひまわり」という作品にてこう書いた。

頭が良くなるというのは物凄い推論エンジンになるということらしい。通常の人間より、多くの可能性を短時間にシミュレートできるということだ。

これはそういう話。

飛んできた鳥を空中で解剖し、隅々まで学び、縫合して、また飛ばす

学生の頃、教授が「先読み」ということを課題にしていたが、当時はふうんとしか思っていなかったな。意外と本質であることに今更感心している。

自ら体験していないのに知っている未来は確かに「死」だ。それを知ることが悟るということでもある。なぜ少女の名前を「悟リ」とかにしなかったのかと中盤では思っていたのだけど、最後までくると、やっぱり「知ル」なのだなあとあらためて思う。

インターネットで検索すれば真偽はともかく瞬時にいろいろな情報が手に入る。ただし情報を公開する人がいるからその恩恵に預かれるわけなのだが。
ともかく知識は簡単に手に入る。ここ十年で知識を問うテストやクイズなどにあまり価値を見いだせなくなった。でもすべてを知り、理解するというのはまた別のことだ。いや同じなのかもしれない。自分の脳に本当に理解できたのかチューリングテストしてみないとよくわからない。でも理解できていないとそもそもその問いを構築できるだろうか?

この前みた「クロニクル」でも超能力も筋トレが必要だと言ってた。実際脳に直結する外部デバイスを手にしてもそれを操るためのトレーングは必要なのだろう。しかし道終・常イチ先生が言うように「自分ではもう遅い」のかな。
シナプスの可塑性という性質により人間は学習するといわれており、大人になってもその性質を有するという報告があるから、三つ子の魂百までと諦めず脳筋トレーニングも少しは役立つのかもしれない。
このなかで一番驚異な人物は、道終・知ルでも有主照・問ウでもなく、道終・常イチ先生だな、量子葉を生み出し何かを理解し死の先へ旅立っていった人間だ。
話の中に出てくるメゾ回路はファンタジーではなく実際に研究されている。
新学術領域研究 「メゾスコピック神経回路から探る脳の情報処理基盤」

  • 「考え殺されたいですか?」
  • 「私、知りたいことがあるんです。」(私、気になります!)
  • 京都御所とは、情報のP4施設、I4施設なのです。」

 P4は物理的封じ込め (Physical containment)レベル4ということ。I4は情報的封じ込め(Informational containtment)レベル4ということ。 Wikipedia:バイオセーフティーレベル
はー、砂利よ。
https://lh5.googleusercontent.com/-IXEDQl220z4/T6SPkq4KrpI/AAAAAAAAC0Q/G5rAtnMq8l8/s300/057.JPG

まとまりないが思うことだらだらと書いた。思うことがたくさんある作品はよい作品だ。