読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

A Perfect Night For Bananafish

だがそれを語るには人生は短すぎる

道化師の蝶

道化師の蝶 円城塔

道化師の蝶

道化師の蝶

読んだよ。文藝春秋 2012年 03月号 [雑誌]の方だけど。

旅の間に本読もうと思って持っていっても大抵ちゃんと読まないし、頭に入ってこない。
昔は本とかゲームとか持っていこうとしていた時期もあったけど、旅のときは旅を存分に楽しんだほうがよいと思うようになった。

物語中ではトモユキトモユキなる人物を追う話が描かれるが、読者的には「A・A・エイブラムス」という名の実業家の人物像を追うところからはじめてみると良い。

I

東京-シアトル間のフライト。1952年、ミシガン生まれ。資産家で事業家。銀の捕虫網を持ち、年中旅客機で飛び回っている男。肥満で毛だらけの指。丸太のような腕。本は読まない。モントルー・パレス・ホテルで鱗翅目研究家者に捕まえた蝶を見せる。

II

死の先年から子宮癌を患って、エコノミークラス症候群で亡くなった。本は読まない。

III

シアトル-東京間のフライト。幸運を捕まえる網を持つ女性。

IV

A・A・エイブラムス私設記念館の設立者はエコノミークラス症候群で亡くなった。友幸友幸捜索のためにエージェントを使って捕獲物を集めていて、彼の死後もエージェントたちは遺産を食い潰しながら捜索を続けている。
鱗翅目研究家者に蝶を見せ、網を進呈される。

というわけで

男か女かわからないし、時間の線がどうやら歪んでいる。
鴨葱にポークチョップというルビが振ってあったり、未来の未来のわたしとか、わたしとは一体誰なのか?
おや??とひっかかるところがたくさん出てくる。国語の試験に出したいレベル。

このおかしな内容ついての明確な説明が本文中で自己言及している。self-reference!

意味のない、相矛盾する、脈絡さえも無茶苦茶なお話がそこにあるとする。でもこの世のどこかには、そんな無理無体なお話を整合的に成り立たせる言葉があったりしないだろうか。
翻訳してみてそれはありきたりのお話となり、どこがおかしいのかが隠蔽される。

脳は勝手にいろんなことを補完して理解しようとしちゃうわけ。テキトーに解釈しちゃう。
果たして「さてこそ」と言う連語もテキトーに解釈して前後関係つなげちゃう。

第145回の芥川賞を逃した円城塔の「これはペンです」は、村上龍に「DNAに関する記述が不正確である」と言われていた。
RVR 芥川賞、受賞作はなし HD MSN ビデオ(4:43付近)
「道化師の蝶」はこれに対する挑戦状のように受け取れる。だったら矛盾だらけにしちゃうから、こまけぇことは勝手に解釈してろよ。と。
逃げのようにも見えるが、本作は芥川賞を受賞することになり、石原慎太郎は「バカみたいな作品ばっかり」と言い放ち、選考委員を降りる宣言をするに至った。

まあバカみたいな作品だ。

頭の中のお花畑をひらひらと飛び回る着想が何らかの形で表現された瞬間、その卵が他人の頭の中に産み付けられる。そして独自の着想がまた産まれて来る。
ミーム的なものなのだろうな。円城塔はその最初の蝶を世の中に解き放ったのだ。

さてこそ登場する蝶「アルレキヌス・アルレキヌス」は、ナボコフの描いたのが元ネタらしい。
EnJoeToh
http://30.media.tumblr.com/tumblr_lkcx12XdOW1qzd5jjo1_400.jpg

道化師をごらん! (1980年)

道化師をごらん! (1980年)


詳しくは大森望の攻略を
円城塔『道化師の蝶』攻略ガイド - 大森望|WEB本の雑誌

で、これは腸ではないらしい。