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A Perfect Night For Bananafish

だがそれを語るには人生は短すぎる

これはペンです

これはペンです

これはペンです

これはペンです

ようやく少しゆとりができたので本を読み始めたわけだが、読み終わって、今年の「SFが読みたい! 2012年版 」を読んだら国内1位。
このタイミングだとなんかミーハーっぽくて悔しいな。

SFが読みたい! 2012年版

SFが読みたい! 2012年版

  • これはペンです
  • 良い夜を持っている

の2編。

以下、内容に触れる。

これはペンです

まず表紙のデイジー・ボールというIBM Selectric typewriterのタイプボールが目を引く。
実際のデイジーボールは
http://m.afloral.com/Two-Tone-Green-Gerbera-Daisy-Kissing-Ball-024.jpg

オリンピアダン虫のリモコン操縦、磁石を熱すると磁性を失うといったサイエンスネタを交えつつ、多くの引用が散りばめられる。明日使える無駄知識の宝庫だ。

■人物

■定理

■SF
SFかどうかってのはいつも争点になるところではあるが、まあこれらが出てくるとSF者の心はくすぐられるのではないか。


自動論文生成。
学生当時、論文書くためのテーマ決めるときに、あらかじめそれっぽいキーワード書いた紙を3つくらいくじ引きして、組み合わせたら新理論でっちあげられるんでは?なんて言ってたけど、それを本気でやっちゃう感じだね。発想法などでもよく使われる手法だ。レゴブロックのように壊して組み替える。
そういえば、大学の講義で、レポート回収後に「今回のレポートは3系統に分類されました」と言われたことを思い出す。叔父は24系統。
私が学生の頃はまだインターネット黎明期で、人脈コピペだった。
最近はネットコンテンツも充実し検索もすぐれてるので指導員は大変だろうなと思ったけど、指導員の方も検索できるわけだから、どうということはないのかもしれない。
コピペ見破りサービスなんてのもあるくらいだ。


叔父は結局24人いたようだが、24人といえばビリー・ミリガン?

いや、ギリシャ文字だ。叔父は文字だ。
はじめにことばありき。アルファにはじまりオメガで終わる24文字だ。
タイトルの「これはペンです」。英語を習うと最初に覚えるようなこの言葉。
言葉を新しく覚え、引用して、つなぎ直して、新たな表現を作り出し様々に枝分かれしていく。人間は生まれながらにしての自動論文生成機械だ。

Aを押せばUが出る。Cを押せばGが出る。

と、DNAの話が出てくる前からRNAのアデニン、ウラシル、シトシン、グアニンをしれっと混ぜ込む仕掛けも見逃せない。
単純な文字構造を組み替えながら転写しながら新たなものを生み出していく「変転」の物語だ。姪は叔父を引用し、分析することで変転していくのだろう。

「何度も書かれ直すような小説をわたしは知らない」

料理や音楽は何度も作られるのに小説や論文は同じものが作られない。まあ写経といった行為はあるわけだがなんか違うよね。

良い夜を持っている

こちらもいろは歌のアナグラム
鳥啼歌(とりなくうた)が登場したり、芥川龍之介夏目漱石、森鷗外、宮沢賢治堀辰雄室生犀星坂口安吾太宰治、宮島資夫、ドストエフスキーフランツ・カフカコナン・ドイル、ピオピ、ピエール・メナール、スウィフト、キケロルイス・キャロルといった数々の有名な文学から引用される。

ルリヤも教授も心理学者だったから、対象者の記憶を無限とみなして満足していた。

ソロモン・シェレシェフスキーという記憶術師が実在した。彼はアレクサンドル・ロマノヴィッチ・ルリヤという心理学者の元を訪ねたらしい。「五感すべてが連結された極度の共感覚の持ち主」って一体どんなもんなんだ。第十感くらいまでありそうな感じだ。


街を丸ごとスナップショットを撮った様に記憶して絵に描いちゃう人は実在する。
Stephen Wiltshireという。その再現性は驚異的だ。
http://www.stephenwiltshire.co.uk/Tokyo_Panorama_by_Stephen_Wiltshire.aspx
http://www.stephenwiltshire.co.uk/images/Tokyo_Panorama_print_by_Stephen_Wiltshire.jpg


記憶術師は、物事を覚えるのに物語を関連付けるという話はよく聞く。仮想エピソード記憶とでもいったところか。
物語とはエピソードの連続だ。前の行が次の行のルビになり、文脈というものを生みだす。
ここにもたくさんリンク貼ったけど、円城塔作品はWikipediaを読んでる感じがするんだ。なんだか興味深い知識の断片を物語でつなぐ記憶スタイルと言えそうだ。


眠りに落ちた自分が次に目覚めるときに自分であるかどうかなんてイーガンっぽいアイデンティティの話。
宗教学者、山折哲雄の言葉

明日の生命力は、死のような眠りからこそ生まれるのです。

「死を受け入れてこそ生がある」ゲスト 山折哲雄 (ラジオの街で逢いましょう、他)
毎晩死ぬ覚悟で寝ろってわけだ。そうすれば一日はもっと充実するはずだ。


というわけで
Have a good night.
良い夜を持て。父への弔辞。おやすみなさい。
さて、もうすぐ春。バネを持って来いと叫ぶのだ。
Spring has come.