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A Perfect Night For Bananafish

だがそれを語るには人生は短すぎる

人間失格

太宰治 人間失格

人間失格 (新潮文庫 (た-2-5))

人間失格 (新潮文庫 (た-2-5))

Googleブックスで読んだ。
今まで途中までは何度も読んだことあったのだけれど、最後まで読んだのは実は初めてである。

酒と女と薬に溺れたダメな奴だが、それはそれで充実した濃い人生を送っており
27歳にして白髪まじりの40歳のようになるのも無理はない。
どうでもいい連中にはお道化てみせて人気者、支えてくれる親戚がおり、
本当の自分をさらけ出せるお友達や女たちがおり、
ああ、ただぼんやり日常を過ごす自分と比べたらどんなに人間らしいことか。
濃い人生は恥の多い人生であり、それは終わってみると誇らしくさえ見える。

「何それ、ちょっとした自慢!?」
とでも言いたくなるのだ。

本人はうまくやってるつもりで、どうせ自分の苦悩など凡人には理解できない、
などとお高くとまっているが、なんてことはない。全部周りには見透かされている。
まあ、核心をついて来る奴、最初は嫌だけど案外あとで仲良くなれるよね。
内面隠す必要ないから楽になるんだ。

自分がもっと若くに読み終えていたらどう思ったか気になるところであるが
一さいは、過ぎてしまっており、最早どうしようもない。
鬱になるなどという感想が多いこの本であるが、どういうわけか私はこの本で救われるのである。
葉蔵の内面にひどく共感を覚える反面、どこか他人事のようにも思われる。
喀血シーンで彼も血の通った人間だという感覚を味わった。
リストカット少女みたいなモンだろうか。と、このタイミングで
人間、失格
世間とはなんて冷たいものか。普通とはなんだろう。合格するにはどうしたらよいのだろう?
自分もうつ期には苦悩したものだが、もうなんだか忘れ始めている。
喜ばしいことなのだが、少々物悲しくもあるな。トシのせいなのか。
自ら人間失格の烙印を押しつつも、一さいは過ぎて行くという結論を導き出したのは
悟りの境地。
鬱のどん底にあってもそれもまた過ぎて行くのだと思えばやり過ごせる。

そうなんだ。ただ一さいを、やり過ごしている。
こんなつまらない人生あるかよ。まだ人間失格の葉蔵の方がマシな人生送っている。
というわけで少しモチベーションあがるのだ、この本は。

太宰治は故郷の私の母校の大先輩でもあり親近感を覚えるのだが、
実際同級生だったら向こうはA級リア充男子、こちらはB級日陰男子といった感じで
「お前なりにいろいろ絶望してるんだろうが、聞いて呆れるぜ」と思いつつも
彼を持ち上げて喜んでいたに違いない。

しかし太宰の文章のテンポのよさ。軽快なのにズシリと重い。あの筆致には憧れる。