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A Perfect Night For Bananafish

だがそれを語るには人生は短すぎる

四畳半神話大系

友人が貸してくれたので読んだ。

四畳半神話大系 (角川文庫)

四畳半神話大系 (角川文庫)

前回書いた「好機」の話が出てきて、ああもしかしたらこの作者と同じようなタイプの妄想をするのかもしれないなどと勝手なるシンパシーを感じたりもしていたわけだが作者にとっては迷惑千万。よく言えばいい迷惑だ。

なんだかんだでやっぱりどこかリア充である主人公に、嫉妬した読者は多いはずだ。自分にも小津のような悪友がいたらと羨ましく思ったり人もいるに違いない。俺だ。しかし実際にそんな奴がいたら迷惑千万。よく言えばいい迷惑だ。

凡庸な大学生活を送った身としては唇を噛むような思いである。いや、唇を噛むような思い出しかない。いや、想い出がない。一体あの若い時間を何をやっていたのだろうかと振り返るわけだが、問題はというとまさにそこだ。よい想い出がないのは置いておいて、悪い想い出もない。それはそれは無事でよいことであるのだけれど、修羅場をくぐりぬけてこそ強くなれるような気もしているので、平坦な生活をしていた自分に成長はあったのだろうかと疑問を感じるのである。きっと素晴らしい想い出がたくさんありすぎてひとつを選び抜くのが難しいのだろうと思い込もうとした時期もあったけれど、それはそれで虚しいからいつしかやめてしまった。結局、振り返る想い出を見つけられないくせに過去を振り返ってみたところで、何も新しいものを見つけられやしないのである。仮に見つかったとしても過去であるわけだから新しいものが見つかることはない。暗澹たる日々であり悔やまれること甚だしい。などと言ってみたところで、想い出などないのではなかったのかと悔やまれること甚だしい。成就した恋愛と同じくらい語るに値しない。

で、最後まで読んでみると、驚きの平行世界の謎が明らかになり、すべての世界線がつながる。くだらねえ悩みなどすべて蛾の大群と鴨川に洗い流していただいて、今を生きるのだ。世界はこんなにも美しいぞー!というなんともすがすがしい気分で読み終えた。いわゆるデウス・エクス・マキナ。映画のマグノリアで天から降ってくるアレのように、あまりにも常識を超えた出来事に今までの苦悩がどこかへ吹っ飛んでしまう。

さて、過去を悔やんでもいたしかたない。夜の街へ飛び出せばきっとまぶしい夜明けが訪れるに違いない。暗闇のなか、手探りでもいい、傍から見たら痛々しいほど無闇に我武者羅に生きてみるのも悪くないのではないか、などと前回の記事からのダイバージェンスの向こう側の世界を臨んでみたりするのである。エル・プサイ・コングルゥ