A Perfect Night For Bananafish

だがそれを語るには人生は短すぎる

円城塔「Self-Reference Engine」

Self-Reference ENGINE (ハヤカワ文庫JA)

Self-Reference ENGINE (ハヤカワ文庫JA)

単行本を積んでるうちに文庫が出ちゃって、しかも2編追加とか!結局文庫を買うハメに。
4月に読み終わってたのだけど、いまさら感想など書いてみる。円城作品の中ではイチバン面白いんじゃないかな。
2部構成。各部10編ずつ(文庫版で2編追加された)。それにプロローグとエピローグ。
それぞれ独立したお話としても読めるが、複雑に絡み合って枠物語の様相を呈する。
物語が物語自身について物語を物語る自己言及機関。

プロローグ

Writing

いきなりクドい。万能辞書的な話から時空間の話。
これから始まる物語が時間線に沿ってなくて絡み合った団子状態であることを予兆するかのよう。

しかし女の子というのは、あえてそんな筋肉の酷使をしなくとも、時間をふと抜けてしまうことができるのはよく知られた現象だ

第一部:Nearside

01:Bullet

村上春樹っぽい。ジェイ(wikipedia:ジェイ)が出てくるワケだし。

02:Box

箱根の寄木細工のようなカラクリ箱のお話。
"空"しい"繰り"返しという意味でカラクリなのかもしれない。

03:A to Z Theory

26人の数学者がこの定理を一斉に思いついた。頭文字がAからZ。
A-Zの詳しい解説は↓
Self-Referential INTERVIEW ver.2.3
X理論、Y理論、Z理論と呼ばれるものが経営手法の理論として実際にあるようだ。
究極理論が見つかったと事を急いで名前をつけちゃうと、それを超える理論が出てきたときの命名には困っちゃうよね。

04:Ground 256

トメさんは06のトメさんか。

地獄の釜の底が抜けたとしても、底なんてものはいつも上げ底なのだ。

05:Event

この辺りから物語が動き出す。
いや最初っから動き出しているのだけど。01で消失した北米中西部のサンタフェ研究所。そして巨大知性体の登場。
ざわ。ざわ。

「そしてわたしたちはそよ風になった。」

06:Tome

トメさん。自己消失オートマトンの権威
tome【名】〔大部の〕学術書、研究書

「見解の相違ね」
「性格の相違だ」

なぜか01で登場のリタとジェイムスの話題。この物語が複雑に絡み合ったものなのかという予感。
だがリタでもリチャードでもジェイムスでもないと言ってるんだから関係ないのかもしれない。

07:Bobby Socks

http://static.zoovy.com/img/greatlookz/W115-H115-Bffffff/3sxmk108back.jpg
靴下…。
そしてwikipedia:SOCKSプロトコルのダブルミーニング

08:Traveling

巨大知性体と人間の壮絶な(?)闘い。
未来から過去を撃墜。撃墜された過去は過去を改変して未来へ逃げる。とても終わりそうにない。
四方八方を四〇九六方八一九二方って書く辺りがシビれる。

09:Freud

床下から出てくる22体のフロイト
この物語も全部で22話からなるフロイト的悪夢。えー夢オチ!?

10:Daemon

ジェイムス登場。ぐちゃぐちゃになった時空を元に戻したいらしい。
なんでって言われても困るのだけど「僕が僕であるために」ってことらしい。

第二部:Farside

11:Contact

「こんにちは。アルファ・ケンタウリ星人です」

デウス・エクス・マキナ的に突如現れる。巨大知性体の慌てっぷりが実に爽快。

12:Bomb

I believe that P,then P is true.

うつになる巨大知性体

13:Japanese

このお話自体がこのお話を語っている。
日本文字について日本文字で語っている。

14:Coming Soon

なぜここで予告編!文庫化で追加されたのが07:Bobby Socksと、この14:Coming Soon
自己言及ループの中に新たに組み込まれて新しいループを作り出す。
この物語の予告なのか、新たな物語の予告なのか...

15:Yedo

江戸っ子のサブ知性体・・・。もう何でもアリだな。てやんでい。

16:Sacra

バルス!

17:Infinity

「この平面宇宙に、お前と限りなく似た女の子が存在するかどうか」

限りなく似た無数の女の子たちが皆、存在しないことに決めたようだ。「リタがリタであるために」な。

18:Disappear

デイジーデイジー

19:Echo

また箱である。02:Boxと対応するのだろう。
増脳した人間は人間といえるかどうか。

20:Return

ここへ来て、過去改変。もう何が来ても驚かない。
もうこんな話、まっぴら御免だ。

エピローグ

Self-Reference Engine

なんだか腹立たしさすら覚えるエピローグ。
「何なんだよSelf-Reference Engineて。ワケわかんねーよ!」ってなること請け合い。
おそらくそれが狙いなんだろうから、それでいいと思うのだよ。無理やり説明なんかつけない方がシアワセ。
そんなの「物語」としてどうなの!ということになるのだが、これも思うツボで、冒頭の

P, but I don't believe that P.

というムーアのパラドックスにかえってきてしまう。
物語である。が、私は物語であるとは思わない。
Self-Reference Engineである。が、私はSelf-Reference Engineであるとは思わない。
そんなセーフティネットの張り方ありかよ。ズルイよ!
というワケで、この「してやられた感」に腹立たしさを覚えたのだと思う。


以上、ようやく書く気になったのも円城塔のルーツとなる
カオスの紡ぐ夢の中で (〈数理を愉しむ〉シリーズ) (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)
を読んだからである。これについてはまたあらためて。