A Perfect Night For Bananafish

だがそれを語るには人生は短すぎる

ハーモニー

ハーモニー (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

ハーモニー (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

「2009年 星雲賞」日本長編部門受賞作 2009年星雲賞
「第30回 日本SF大賞」受賞作 SFWJ:list 2009/12/06追記

etmlというマークアップ言語で語られる”わたし”の物語。最初は何かっこつけてんの?って思ったけどちゃんと仕掛けがあった。

いわゆる”災厄後”の世界。一度ぶっ壊した方がセカイを自由に再構築しやすいのよね。
ほとんどの病気が根絶された未来。チビ、デブ、ハゲもなくなりいじめすらない。そんな”ユートピアのような”世界で起きる同時多発自殺。

名著や史実の引用にとどまらず「ただの人間には興味がないの」とか「蒼き衣をまといて黄金の野から現れる」とかサブカル系のネタもふんだんに使ってる。それだけに批判も多く好みも分かれるところだが、今風なエンターテインメント作品として大変面白かったと思う。

未来は一言で『退屈』だ、未来は単に広大で従順な塊の郊外となるだろう。昔、バラードって人がそう言ってた。SF作家。そう、まさにここ。

序盤で語られるこのセリフは読後になって再度考えさせられる。果たして結末は『退屈』じゃないものになったのかって。
それと何のためにこの"わたし"の物語は語られたんだ?
ああ、そういえばWatchMe(恒常的体内監視システム)は大人にならないとインストールされないんだったな。結局あの結末はソフトリセット的なものじゃないか。子供たちという可能性が残っていた。だから歴史が語られる必要があった。ハーモニーの解は必ずしもひとつのものに収束することではない。揺らぎながら繰り返して永遠に続いていくことこそがハーモニーなのかもしれない。って思った。未来は退屈なんかじゃない。